つくる場をたずねる vol.2「株式会社モレラ」
かつて多くの製糸工場が並んでいた岡谷市川岸の天竜川沿いに、株式会社モレラの植物工場はあります。この植物工場を営む株式会社モレラでは、水耕栽培された桑を用いて、健康食品や化粧品等の開発・製品製造に取り組まれています。今回は特別に、桑を育てる世界で唯一の植物工場の中を見せていただきました。

株式会社モレラの社屋は一見すると普通の事務所のような建物に見えますが、一枚ドアを開けるとそこにはライトに照らされた桑がずらりと並ぶ植物工場が広がっています。通常、桑の葉は冬になると葉が落ちてしまいますが、この植物工場内は常時、桑にとって最適な成育環境が管理されているため、桑を一年を通じて常に栽培ができるようになっています。工場内で水耕栽培されている桑は、土を使わず屋内で育てられているため、大気や土壌の汚染、害虫等の影響を受けることなく、完全無農薬の状態で育てられます。

この工場内で、桑の種を栽培パレットに植え付け、約10~15センチ程度になるまで桑の苗は栽培されます。一定の大きさに育った苗は水耕栽培のできるビニールハウスに移植・定植され、より大きく成長を促していきます。

水耕栽培と訊くと、大量の水を要するように思えますが、この工場では水が循環されているため使用・排出される水は最小限に抑えられています。照明もLEDのライトが使用されており、最新の設備で電力など使用するエネルギー量も抑えながら、次世代型の栽培方法がなされています。

植物工場の中で育った桑の葉は、太陽の強い紫外線を浴びることなく成長をするので、屋外で育てられた桑の葉に比べて、柔らかく、食べるとほのかな甘みがするのが特徴的です。サラダ、つまり生食でも食べられることから、この屋内栽培の桑の葉は「サラ桑」と命名されました。
この工場内で水耕栽培されたら桑は、収穫されたあとに洗浄・乾燥・粉砕され、お茶や飴などの食品、石鹸やローションなどの化粧品等に加工されていきます。ここからは、桑の葉や根から生み出された㈱モレラの商品を紹介していきます。
食品:桑甘露、飴
水耕栽培された桑には、脂溶性で体内に吸水されやすい特有のポリフェノールがふくまれているため、抗炎症や生活習慣病の予防に効果的とされています。また、食物繊維が豊富で、マグネシムはケールの約5.7倍、カリウムはほうれん草の約4倍、カルシウムも牛乳の約8.9倍という研究結果も出ており、腸内環境改善などにも期待ができるそう。
この水耕栽培された桑の葉を利用したお茶「桑甘露」は、食事前などに飲用することで糖質や脂質の吸収を抑える効果があり、パウダー状になっているため、お湯やお水に溶かして食べたり、ヨーグルトや牛乳に混ぜて食べるのもおすすめです。

化粧品
植物工場で桑の種が植え付けられている栽培パレットを持ち上げると、「ひげ根」と呼ばれる、細い毛細血管のような黄色い根が見えます。このひげ根は名前のとおり非常に細く繊細なため、屋外で栽培される桑からの収穫は困難ですが、屋内の衛生管理された環境で水耕栽培を行うことで収穫ができ、根の収穫と食品・化粧品への利用が可能になります。また、新潟薬科大学との共同研究によって、含まれる成分についても屋外栽培の桑は大きく異なり、屋内栽培の桑にはポリフェノールなどの成分がより豊富に含まれていることが明らかになりました。

このひげ根から抽出したエキスを利用してつくられているのが、「沙羅肌石鹸」「沙羅桑フェイス&ボディーローション」。自然由来の肌にやさしい化粧品です。お肌の弱い方や乾燥肌の方に特におすすめです。

このほかにも、モレラでは現在、桑の枝や蚕沙(蚕の糞)から抽出されたエキスから消臭剤などの開発が進められています。モレラは、桑の根から枝や葉まで、そして桑を食べるお蚕さまの糞まで、桑に纏わるあらゆるものを活用して製品を次々と生み出しており、まさに世界で唯一無二の桑のエキスパートです。
桑は大昔から漢方の生薬としても使われてきましたが、その効用や活用方法についてはまだまだ可能性が無限にある植物とされています。世界で唯一、桑の水耕栽培に挑むモレラの今後の研究と生み出される商品の数々にこれからますます注目が集まりそうですね。

>株式会社モレラ 福島代表取締役社長へのインタビュー記事
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>株式会社モレラ オンラインショップ
書き手:地域おこし協力隊 伊東ゆきの(2025年10月)